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2024.10.10









でこぼこポン発明品展特別座談会!


2024年9月28日よりCEKAI O!K STORE&SPACEにて「でこぼこポン!発明品展!」が開催中。この展覧会では、2022年4月にスタートした番組、NHK Eテレ『でこぼこポン!』に登場する発明品や、再現された番組のセットを通じて、その魅力的な世界観を体験できます。番組は、発達にでこぼこがある子どもたちをサポートすることを目的としており、さまざまなクリエイティブなアイデアが形になっています。
この記事では、『でこぼこポン!』のでこりんを演じるお笑い芸人の鳥居みゆきさん、そして番組ディレクター岩田大輔さん(NHKエデュケーショナル)にお集まりいただき、番組のアートディレションを担当する福田哲丸(CEKAI)とデザインを担当する宮澤謙一(magma)の4人で発明品展に関連して、番組のクリエイティブや裏話をざっくばらんにお話ししていただきました。




















今日はよろしくお願いいたします。


鳥居みゆきさん(以下、鳥居) ねえこれ見て(ご自身の髪飾りを指さしながら)、ウッチャンナンチャンのウッチャンをイメージして作ってもらったの。ナンチャンが好きで、ナンチャンを近くで感じていたいから。


(笑)ー この4人で集まることってよくあるんですか?


鳥居 はい!


岩田大輔さん(以下、岩田) いやないです。


鳥居 嘘言おうと思ったのに!


本日は、発明品展に関連して、番組に関わる皆さまに『でこぼこポン!』の番組にまつわるクリエイティブについて対談をさせていただきたいと思っています。

鳥居 それがクリエイティブですよねって、話のまとめを全部そういう方向にいっていけばいいですかね?


番組の成り立ちをはじめ、発明品など、番組を通じて様々なクリエイティブなアイデアが形になっているので、その裏側のお話をざっくばらんに伺えればと思っています。

岩田 鳥居さん、自由に話しても大丈夫ですって。


鳥居 分かってますって。


岩田 その中でクリエイティブに繋げられる話があればってことですよね。


鳥居 私がクリエイティブ話す担当になりたい!


岩田 どうぞ、どうぞ(笑)


鳥居 ってかクリエイティブってなんですか?


色んな定義があると思うので、皆さんと話しながら自分も考えてみたいと思っています。

鳥居 でも知ってるんでしょ? クリエイティブ。だからこのテーマにしたんでしょー!


福田哲丸(以下、福田) 鳥居さん、いじめないであげてください(笑)


岩田 まぁまぁ、進みましょう(笑)。








 
では質問に移らせていただきます。手を動かして物を作るだけがクリエイティブではなく、社会に意識を向け考えが湧き立つこと、またその考えを具体的にしていくこともクリエイティブなことだと思います。『でこぼこポン!』は「発達が気になる子を楽しくサポートする」というコンセプトの番組ですが、このテーマをコンセプトに掲げる要因となった理由を岩田さんにお聞きしたいです。

岩田 はい。数年前に、NHKが発達障害に関するキャンペーンを実施したことがありました。それもあってか、発達障害に対する社会の理解は確かに進んできたと感じたのですが、その時に発達障害の子やそのサポートを行っている現場の人たちを取材したら、サポートは十分に行き届いていない、と感じました。質や量がまだ不足しているのかな、と。そういう状況を踏まえ、サポートを増やすために、この番組を始めることにしたんです。


そうだったんですね。岩田さんの中にそのような社会への問題提起が芽生えた背景もお聞きできますと幸いです。

岩田 ある時から「普通ってなんだろう」って考えるようになったということがあります。発達障害に限らず、みんなにそれぞれの「凸凹」がありますよね。好みが違ったり、社会の中でうまくやれないこともある。そうした困りごとは、発達障害のある人だけの話ではないですよね。僕自身も、友達を作るのがそれほど得意ではなかったり、子どもの頃から社会とのズレを感じることもありました。


鳥居 でも、死のうとまでは思ったことはないですか?


岩田 どうして生きてるんだろうって思ったことはたくさんありますよ。それから「礼儀とはこうである」とか、「こういう状況ではこうしないといけない」とか、「友達はたくさんいなければいけない」とか、こうであらなければならない、っていう考え方に、悩んだこともありました。


鳥居 いまの話しはクリエイティブでしたね。


クリエイティブじゃなくても大丈夫です(笑)。個人的な感想ですが、社会に対する問いの中で、他人や自分を受け入れる柔軟さが『でこぼこポン!』のテーマにあると思います。その考え方は、多くの人を救うと思いました。

岩田 ありがとうございます。


いま岩田さんがお話してくださったような、社会的なテーマを持つ番組のキャラクターに抜擢されることは光栄であると同時に、大きなプレッシャーが伴うことを想像しました。鳥居さんが番組のオファーを受けたとき、率直にどんなお気持ちでしたか? 

鳥居 光栄であると同時に、大きなプレッシャーが伴うなって思いましたね。


一同 (笑)


鳥居 私自身「変」って言われるから、こういう仕事を振ってきたんだって最初はちょっとショックだったとこもあったけど、いや、これって凄く良いことなんじゃないかって。こういうテーマで演じることって凄く難しいじゃないですか。私は凸凹がある人たちの気持ちも分かるし、むしろこれは私じゃないとできないかもと次第に思うようになりました。


鳥居さんは児童発達支援士、発達障害コミュニケーションサポーターという資格を取られたんですよね? 

鳥居 そうなんですよ! とったんですよ!!


宮澤謙一(以下、宮澤) そうだったんですか?


鳥居 番組が始まった後、知り合いの親御さんから「うちの子は吃音なのかな?」みたいに相談されるようになったんです。それに答えられないのがもどかしくて、知っているのに言わないのと、知らないから言わないのでは全然違うじゃないですか。だから、とりあえず知ろうと思いました。『でこぼこポン!』の収録が一ヶ月空いたとき、これは今しかないと思って、気づいたら試験を受けてましたね。正直、最初は一仕事として、演技しようと思ってたんです。でも少しづつ番組のテーマを自分の中で咀嚼しながら考えるようになって、そしたら嘘じゃんって思ったし、でもそれが自分じゃんとも思うようになって。それで、私自身の延長線上で素直にやろうってアプローチに変わっていきました。今は他人としての接し方じゃなくて、自分も含めた番組にしたいと思うようになりました。


取られた資格をもとに、今後こういうことをやってみたいなど何かありますか?

鳥居 あるんですけど、それを売りにしたくないとも思ってて。自分が学びたいから学んだだけなんです。資格を取ったからこういう仕事したいですっていうのはおこがましいですよね。まだ知り始めたばかりだし、もっともっと楽しく勉強していけたらいいなって思います。


ありがとうございます。他の皆さんは、その番組が始まった当初と今で、なんか変わった意識とかってあったりしますか。

鳥居 私、テツマルさんが変わったと思います。前までは現場に来ても全然コミュニケーションを取ろうとしてくれなかったんですよ。自分のよく知ってるバイト先の人が、地元の友達が来た時の接し方は全然違うとかってよくあるじゃないですか、そんな感じで。


福田 俺そんなふうに見られてたんだ(笑)


鳥居 もっと知りたいな、話したいなってやってたら、テツマルさんが最近よく収録現場に来てくれるようになって私嬉しいです。


岩田 一緒にダーツもやったんでしょ?


鳥居 そうそう、プチ懇親会があって。テツマルさんはじめてでめっちゃ必死なんですよ。でも負けず嫌いでね。こういうクリエイターってやっぱ負けず嫌いだから。


岩田 そうやって鳥居さんが気持ちを開いてくれて、番組に歓迎してくれていると感じられて、自分としては凄く助かりました。


鳥居 誰とも喋んないでいたんです。ほんと(笑) でも自分の周りのCEKAIさんのチームの人たちとだけ「うぇーい!」みたいな! 寂しかったんです、こっちにもその顔見せて欲しいなって。


岩田 鳥居さんのおかげですよ。


鳥居 でもダーツはもうちょっとゆるく楽しくやった方がいいよね(笑)。









テツマルさんはどういう理由で番組の収録に行くんですか?

福田  電話でも済んじゃうような用事なんですけど、 まぁ遊びに行ってる感覚に近いですね。


鳥居 来てなかったから私が来てってLINEするから。


福田 収録の直前にね(笑)


鳥居 その日に仕事が入ってないカメラマンさんやディレクターの人もふらっと来てくれるんですよ。


福田 『でこぼこポン!』の現場は異常に空気がいいっすよね。違う現場で一緒だった人に、『でこぼこポン!』の現場に来てもらうと、凄い空気いいっすねってよく言ってもらえて。鳥居さんが凄い気を使ってくださってるのもあってね。


鳥居 そういう計算でやってるみたいに言うのやめてよ! 私こそ人見知りなんですけどね。


福田 各々がこの番組が好きってのはあると思いますけどね。


鳥居 みんな 『でこぼこポン!』って番組を愛してるし、こういう番組に関わってるからこそ、これが苦手だなって思ったことを誰かが自然にフォローしてるような気もします。


鳥居さんが仰ったように、こういうテーマの番組だからこそ、人に寄り添おうみたいに、無意識にそれぞれをサポートしているのかもしれませんね。

鳥居 技術さんとかがさ「おい!お前これちげーよ!こーだよ!」みたいにいう現場がよくあるじゃないですか。それがこの番組にはない。


一同 (笑)


福田 岩田さんは『でこぼこポン!』の現場のムードが良いなって感じたりしますか?


岩田 もっと緊張感を出そうかと思うときもあります(笑)。でもこの番組が和気藹々としてるのは、このチームでもう四年も続けてるので、信頼関係もできて、番組が目指すところがある程度共有されてるのもあると思います。


鳥居 でも私、毎回緊張しますよ。凄いプロの技術さんが集まってるせいか長回しするんで、ミスしないように一連の流れで覚えなきゃって。


岩田 鳥居さん、かなりちゃんと台詞入れて来てくださいますよね。


鳥居さんは番組に携わってて、どんなときに一番幸せを感じますか?

鳥居 私、結構周りの人に『でこぼこポン!』があるおかげで救われてるって言われるんです。 救われてるっていう言葉で、私もやっててよかったなって救われるんで、ウィンウィンだと思います。あと今まで喋ったことのなかった芸能人の先輩とかに、「実はうちの子って」って相談してもらえたりして、それをきっかけに仲良くなったり。今まで、なんで私にはこれが出来ないんだろうって、それがずっと悩みでした。私、耳で聞いたことが覚えられないんですよ。目で文字として見ないと名前とか覚えられない。『でこぼこポン!』のスタッフさんたちは、台本の追加の台詞をただ言って伝えるだけじゃなくて、書いて見せてくれたりして、そうやって出来ないことを無理して覚えようとしないで大丈夫なんだ、人に助けて貰えばいいんだって気づくこともできました。


そういうことに気づくことで、自分も周りに優しくできるようになったりもしそうですね。

岩田 鳥居さんが話してくださったことは、番組において凄く大事にしてることなんです。基本的に「答えを教えてあげる」「やってあげる」って態度を番組ではとらないようにしています。分からないことやできないことを全部代わりにしてあげちゃったら、その場は解決するかもしれないですけど、それはその子の成長のチャンスを奪ってしまうことでもあるなと。だから番組に登場する発明品が一方的に何かを解決するのではなく、その子ができるようサポートして、その子の力をうまく引き出すとか、苦手なとこだけカバーしてあげられたらいいなって。


鳥居 えー! ずる! めちゃいい話した! 


福田 子ども向けの番組を制作したり、子ども向けのイベントをやったりする度に、岩田さんがいま話してくださった教えてあげちゃうってことで確実になくなる余白があるのを自分も実感してて。答えを教えたらそれで終わっちゃうじゃないですか。そこに広がりはないし、変化も発見もない。未来は何も変わらないし、今まで生きてきた人の見地でしか話が進まないから、当然革命も起きない。これまでをこれからに変えていけるのって子ども達だから、そういう未来がある子ども達を受け入れて、一緒に考えるってことを大事にしたいなって思います。なんていうか、子どもナメんなっていうか。


鳥居 ほんとそうです。


福田 いま振り返ってみたら、子ども番組だからこういうアートディレクションにして欲しいってオーダーを岩田さんから受けたことないなって思いました。大人が見ても楽しめるクリエイティブなアイデアを出しても、岩田さんは面白いって言ってくれたり。子どもだからそこに合わせるみたいな戻しもないですね。


岩田 今後、そういう戻しができなくなりましたね(笑)。


鳥居 うわ!先手を打たれましたね!




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開催情報

でこぼこポン!発明品展!
会期:2024年9月28日(土) - 10月14日(月・祝)   
※9/30(月)、10/7(月)はお休み。
営業時間:10:00 - 19:00
入場料:500円(3歳未満無料)